2023年、1~3月期で放送された日本テレビ系列の「ブラッシュアップライフ」は出色でしたね。
30歳過ぎで交通事故死した主人公(安藤サクラ)が、あの世で次の人生の選択を迫られます。しかし次の転生先は徳が足らず、満足のいくものではありません。その場合、同じ人生を繰り返すことはできます。そこでもう一度同じ人生をやり直し、徳を積んでいこうという内容です。
おもしかったのは、
① 周回毎に人生が改善
このドラマ、いいところで死んでしまい、何度も人生をやり直すことになります。これは最近流行り言葉になっている「人生●週目?」に帰結しました。繰り返す度に、人生がブラッシュアップされ、改善していく様がおもしろかったです。
② 職業が変わり、生活が変わる
最初は役所つとめだった主人公は、テレビ局に勤めたり、医療研究者になったり、女性パイロットになったりします。それも適当な設定ではなく、かなり詳しいディテールに基づいて、人生が激変する様が描かれています。
③ 友達関係は改悪
やり直す人生を好転させるには、ハードな勉強をする必要があります。パイロットの際はハードな運動も伴います。それによって、本来親友だった人たちの関係が疎遠になり、それを悲しむ描写も印象的でした。
④ 重要な変更点は踏襲
友人や先生の不倫を事前に食い止めたり、担任の先生の冤罪を防いだり、祖父の薬の誤飲をやめさせたりする重要な変更点は毎回踏襲します。ただし、微妙に改善していく様は毎回オチがあり、「またきたな」と思いつつも、その微妙なオチで許せました。これは脚本を担当したバカリズムの芸人として資質のたまものだと思います。
⑤ あるあるのうまさ
人生の要所に出てくる商品やサービス、音楽などが実物なので、「あー、そんなことあった、あった」となつかしむことができます。その芸の細かさはやはりバカリズムらしく、やり直す人生毎で異なっていたことも楽しむことができました。
⑥ いいところで死なすが全体的に明るい
やり直し人生がいいところまで行くと再び死なせてしまいます。しつこいくらいまでこれを繰り返すのですが、イヤにならない。それは全体が妙に明るいトーンで描かれているからです。最後は飛行機事故で亡くなる親友たちのために、パイロットになって救うというシナリオだったのですが、ペーソスたっぷりにハッピーエンドに導いたストーリーは圧巻でした。
マクロな設定がおもしろいとともに、ミクロな描写にも手抜かりがない。あらゆるシーンを徹底的に考えてある。坂元裕二や金子茂樹を髣髴させる、ディテールの作りこみと含蓄あるセリフにも感激しました。
バカリズムはこの作品ではねましたね。きっと今後は脚本家として、やっていくのでしょう。次回作が楽しみです。