アサヒビールの新社長に、P&G出身の松山一雄氏が就任しました。キリンビールもP&G出身の山形光晴氏が副社長に昇格します。ふたりとも入社してから数年で、ヒットを飛ばした実績を持ちます。P&G流が奏功したのでしょうが、それはいかなるものなのでしょう?
山形氏がキリンビールに来たのは2015年。この時、味や価格帯で他社にないポジションを探し、そこから新製品の開発に取り組んでいたことにビックリしたそう。それはサプライヤ発想で、顧客ニーズは念頭になく、ブランド価値を磨こうという意識も希薄だったそうです。
これに対して、山形氏が取り組んだのが、第三のビール「本麒麟(きりん)」。ネーミングにキリンビールの「麒麟」を使い、コーポレートカラーである「赤」を基調としたパッケージにしました。
当然、社内では「色がきつすぎる」、第三のビールに「麒麟」を使用することに反対の声が多かったのですが、強行して、見事にヒット。
一方、アサヒビールの松山社長は、横割りのマーケティング組織の設立を訴え、事業推進室を発足し、松山イズムを浸透させました。
ここから斬新な商品や企画を登用し、「生ジョッキ缶」をヒットさせました。缶の蓋を開けると、ジョッキのように泡が出てくるこの商品は、コロナ禍で、外で飲めないビール愛飲者に「懐かしさ」を想起させました。
P&G流は、顧客ニーズから逆算して、開発・生産・販売・販促などを一体化して進め、ブランドを長期的に育て、高収益につなげます。
これをふたつの旧態依然な会社で実践し、サプライヤ発想を改め消費者発想としたり、縦割り組織に横割り組織を作って、柔軟な発想を登用できるようにしたのです。
これは歯科医院でも援用できると思います。
患者のニーズを第一に考えて、設備投資や治療やマネージメントやマーケティングを行う。またドクター、スタッフともに発想して、それを経営や運営に活かす。ドクターだけでなく、スタッフだけでなく、両者が一体となって取り組むことが大切なのです。
(3/30 日経 ビジネス2面 中村直文氏の記事を編集、加筆)