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石井亮次氏に見る黒子の時代

2023.3.22

石井亮次という人をご存じでしょうか?

名古屋に本社のあるTBS系のCBCテレビを退社してから、同局系生情報番組『ゴゴスマ~GOGO!Smile!~』(平日午後1時55分)のMCをやっています。

その人が、長寿番組であるTBS系『日立 世界ふしぎ発見!』(土曜午後9時)の司会として、37年に渡ってMCを務めた草野仁アナ(79)の後任として、指名されました。

また4月からは、関西ローカルの生情報番組『LIVEコネクト!』(関西テレビ、土曜午前11・20分)のMCも務めます。他にも単発番組やゲスト出演もありますから、超売れっ子と言っても過言ではないでしょう。

しかしこの人、目立ちません。

コメンテーターには自由に話させ、自説を熱弁するようなことはありません。コメンテーターにいじられることもたびたび。

スタジオで声を荒げることもなく、コメンテーターの意見も否定しません。

かつて一世を風靡したみのもんた氏や坂上忍氏、宮根誠司氏のように、自分の個性を前面に出し、一緒に出演するコメンテーターやゲストの存在感を薄くするようなことはありません。

石井氏と同様と見られているのが、羽鳥慎一氏。2011年に日本テレビを退社し、テレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー』(平日午前8時)のMCを務めます。氏も控え目で、持論はほとんど語りません。一方でコメンテーターには存分に時間を与え、途中で言葉を遮るようなこともしません。

また、NHKを2月末に退職して、4月から日本テレビ系の新生情報番組『DayDay.』(平日午前8時)のMCを務める武田真一アナ(55)も同じタイプと見られています。災害などの悲劇を報道する時、目を真っ赤にすることはありましたが、こみ上げる悲しみすら表に出さないよう努めていた人です。

彼らに共通しているのは黒子に徹していること。

かつて石井氏の密着番組を見たことがありますが、早朝から局入りし、何紙もの新聞を読み重ね、スタッフと徹底的に打合せをし、当日の流れを何度も何度もシミュレーションしていました。

その上で、コメンテーターやゲストのキャラクターを知り尽くし、ヒントを出しながら、彼らに花を持たせるのです。

これは本来の局アナの要素に加え、内容を知りぬく、プロデューサーとディレクターの要素も加えたと言っていいでしょう。そしてそれこそが、フリーで多額の報酬をもらうMCとしての要件だと思うのです。

フリーは自由だからフリーなのではなく、そこにはサラリーマン以上の努力と責任が必要だから、名前だけフリーという言葉が与えられているとよくお話します(フリーになってから30有余年の私の経験から)。

だからこそ、黒子に徹して、個人ではなく、番組のために貢献できる。ゆえに、自分は目立つことなく、個々の出演者やスタッフを立てることができる。それが見た目にも平和で美しいので、ヒットしているだと思うのです。