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収益モデル①

2023.3.24

①アドバンス利益モデル
これはおカネを先取りするモデル。例えば、翻訳などのアドバンス。海外の文献を日本語に翻訳して出版するときは、アドバンスといって先にお金を払って翻訳権をとるという習慣がある。
また販売店への交渉を有利に運ぶためのアドバンス。これは自社の商品を店頭のいい場所においてほしいときに、お金を払って、いいところにおいてもらうこと。
また売れれば売れるほどお金がはいってくることを販売インセンティブというが、最近はいきなり1000台、1000本などを出荷してしまい、それに対してインセンティブを払う、前払いのインセンティブというやり方が流行っている。
こちらが優位な立場であるとき(権利を持っている、売れ行きが良好など)にはとても効果的である。
ここで考えたいのが、商品への課金を単品ではなく、時間に課金するという視点。例えば、イタリアンレストランならパスタとかワインに課金するのではなく、1時間、そこで何を食べてもいいということに課金する。いわゆるバイキングみたいなもの。
こうすると食べる、食べないにかかわらず事前により大きなお金をとることができる。食べ放題と言っても、お相撲さんのような大きな人でない限り、原価を割れてしまうくらい食べる人は少ない。
それとよく似ているが、時間会員化。1日、1か月、3か月、半年、1年で会員化する。1日いてもいいからこれだけ、1年毎日来てもいいからこれだけというように課金する。
例えば小田急がやっている箱根フリーパス。これを買うと、ロマンスカーやケーブルカー、ロープウェーに乗れるが、全部乗ることはないだろう。しかしそれの方が得だと思ってしまう。
あるいは、1年毎日行ってもいいということで、1年会員になってしまうというケースがある。スポーツクラブなどはどうせ1年は通うのだから、少し安くなるならと1年分まとめて払ってしまう。

②チョイスボード利益モデル
ネット上で、商品のカスタマイズを可能にすることで、事前決済するモデル。
チョイスボードとは、顧客が特性、構成要素、価格、受け渡し方法などをメニューから選び、自分の購入する製品やサービスをカスタマイズできるオンラインシステムのことをいう。
このモデルの成功者としては、デルが有名。ネットでデルのサイトに行き、基本プランに対して、様々なオプションを選ぶことで簡単に自分に最も適したPCとすることができる。課金もその場で済ませられるので、自分オリジナルのPCを、手間いらずで手に入れることができる。
他にもアマゾンやネット証券会社、楽天などもこのカテゴリーに入る。デルほどカスタマイズの範囲が大きくないにしても、顧客は、買い方(ワンクリック方式など)、届け場所・時間、継続購買、中古品販売などの選択肢が得られる。
このモデルが効果的なのは、顧客がメーカーから押し着せられるセグメンテーションとは異なる、自分独自のセグメンテーションができる点。
顧客は自分の欲求が充たされた製品、サービスを手に入れることができるので、満足度は高まり、それにより、事前決済に対して何の疑問も持たなくなる。
また上位製品への移行や関連購買を誘発でき、さらには継続購買率も高くなるので、マーケティング的にも効果的である。
同時に顧客の販売データももれなく獲得できるので、製品開発、調達、販売計画などにも反映できる。

③顧客ソリューション利益モデル
顧客のニーズを全部叶えることで収益を拡大するモデルである。
例えばIBMのソリューション営業は有名。IBMはもともとパソコンの会社であったが、パソコンだけではなく、会社のシステムの構築、クライアントやサーバーまで全部含めてIT全体をソリューションしてお金に換えていくということをした。
また電通のように、コミュニケーションに関する全て(マーケティング、広告、セールスプロモーション、クリエイティブ、WEBなど)の課題を解決することで収益をあげるというのもこのモデルである。
このモデルは、顧客リレーションの維持コストは低く、継続率はきわめて高いため、短期的な利益はマイナスでも中・長期的にはプラスに転じる。
私はマーケティングプランナーであり、コンサルタントでもあり、他にも研修、講演、執筆活動などを仕事としている。最近ではこれらを個別に受けるのではなく、全てひっくるめて受けている。
例えば、コンサルティング、プランニング、社員研修、広告出演、交渉を一括で受ける。企業のコンサルティングは、それだけでなく、プランニング(経営、マーケティング、プロモーションなどの)もやる。
広告をする場合はそこにも登場する。他の企業との交渉ごとも自分の名をもってやる。社員の研修、OJTもやる。それらすべてを一括でやるから、それに応じた報酬をもらうことができるのだ。
さらに、そういう月々の報酬に加えて、成功報酬、ストックオプションを組み合わせる。仕事が成功した場合には、決算後に利益の数パーセントを頂き、上場させた場合には株を頂くということもやっている。
月にもらうお金は生活できればいい。その代わり、成功したときには収益が入るというやりかたをしている。これは将来的な得も考え、お金が多面的に入るように考えた収益モデルである。

④ハイブリッド利益モデル
リアルとバーチャルでビジネスを展開することで収益を拡大するモデル。
タワーレコードは、リアルでCDの物販をするとともに、webではコンテンツサービスをしている。両方とも同じコンテンツだとしても、リアルとバーチャルでの顧客層が違うので、カニバリゼーションを起こすことなく、売り上げを拡大することができる。
またTSUTAYAは、リアルのチャネルで商品をレンタルしたり、売ったりするとともに、携帯電話などでも同様のことをしている。レンタルをリアル、バーチャルで行うことで、こちらも売り上げを拡大しているのである。
かつて私がやったのが、情報の2次、3次使用課金というもの。
例えば、リアルで行った講義映像をストリーミングなどで見せてネットで課金する。さらにエアーキャンパスというメーラーでコンサルティングをして、遠隔課金をした。これが大前研一氏のボンド大学の仕組みである。
最近のケータイ小説の書籍化というのは、バーチャルではじめたことをリアルに転用したモデルである。他にもバーチャル上で音楽コンテンツを展開し、人気のあるものだけをCD化して売るというのもこのモデルである。最近では浜崎あゆみでさえ、いきなりCD化せず、ネット限定ではじめる時代になっている。
こういうやり方をするとリスクが少ない。なにしろデジタルコンテンツだけの展開なのだから、紙はいらないし、CDもCDケースも歌詞カードも要らない。今後はこういう展開がますます増えてくるに違いない。

⑤ローカル・リーダーシップ利益モデル
ローカルでのリーダーシップを確立し、収益性を高めるモデル。食品スーパーや小売りチェーン、ホーム・ヘルスケアなどに多く見られる。
代表例としては、スターバックス、セプンイレブンなどがある。
アメリカにおいてのスターバックスは、収益性を管理できない地域には手を広げず、シアトル、シカゴ、バンクーバーと制覇していった。自らの経済性がロジスティックス、口コミ、リクルートにあることを理解していたことが成功要因となった。
セブンイレブンは、特定の県を順に制覇して、ローカルでの経済性を高めていった。
ローカルでリーダーとなると、立地、仕入れ、コミュニケーション(宣伝・口コミ)、ロジスティクス、採用面において経済性が高まる。
事業展開を全国へ一気に広げるのではなく、地域から地域へと絨毯爆撃により制覇することが重要であることをこのモデルは教えてくれている。
かつて筆王という年賀状ソフトをやっていたことがある。私が加担した当初のデータを調べると、市場シェアが16%しかないのに(リーダー筆まめは60%)、首都圏比率が圧倒的に高かった(60%近く)。
そこで、年賀状という商材の特徴として、首都圏と地方での利用には差がないだろうという仮説の下に、東・阪・名をはずした地方に大量のテレビCMを投下した。
すると、地方での認知が一気にあがり、この年、前年2.5倍という驚くべき売り上げを達成し、シェアも40%近くまでに到達した。
この後、筆王では地方で強いブランドとして安定した売り上げをあげることとなった。これもローカル・リーダーシップを戦略として採用したことが奏功したからだろう。